「フェーズフリー」な施設としての国土交通大臣認定自走式立体駐車場について
2024/02/18
はじめに
当工業会が扱う「国土交通大臣認定自走式立体駐車場」(以下「認定自走式立体駐車場」)はシンプルかつ強靭な基本構造に加え、原則として外壁を設けない開放性の高いデザインを有しています。このため、地震に強く、かつ津波や洪水の水圧を逃がすことができることから、災害発生時の避難施設として機能します。
認定自走式立体駐車場。外壁を持たない開放的な構造が特徴
実際に、2011年に発生した東日本大震災で津波被害を受けた地域の認定自走式立体駐車場が、津波を受けても倒壊せず、津波を避ける高台(垂直避難場所)として機能したことがわかっています。その他にも、2004年の新潟県中越地震では被災後の復旧活動における支援物資の発着拠点として認定自走式立体駐車場が活用され、また最近では台風の直撃による被害が予想される地域で、近隣の車両を予め認定自走式立体駐車場の上層に避難させるなどの取り組みも広まっており、地元自治体と災害発生時の認定自走式立体駐車場の利活用について協定を結ぶ事例も増えています。
2011年の東日本大震災時、多賀城市で撮影(撮影:本田 豊氏)
「フェーズフリー」について
このように、認定自走式立体駐車場は普段は地域の自動車交通を支える施設(=駐車場)として機能しながら、災害発生時には避難施設としても機能するという、2つの特徴を有しています。
現在、災害発生時への備えとして新たなキーワード「フェーズフリー」※が広まりを見せつつあります。これは、災害が発生した時だけではなく、普段から接したり、使用したりすることのできるモノやサービスを日々の生活に積極的に取り入れていこうという取り組みで、日常使いをしていればいざという時も当然そばにあり、使い慣れているから戸惑うことなくすぐに使うことができるため、災害対策として大きな利点となるという考え方に立つものです。「非常時」と「日常時」、どちらの「フェーズ」でも役に立つという意味で「フェーズフリー」と呼ばれています。常温のままでも食べられるレトルト食品、歩きやすい防水ビジネスシューズ、最近では搭載バッテリーから電気を取り出すこともできるEV(電気自動車)などが、まさに身近なフェーズフリーの具体例といえるでしょう。そして認定自走式立体駐車場もまた、「フェーズフリー」を象徴する施設といえます。普段から駐車場として使われ、まちの中にある施設として認知度が高いことから、いざというときの避難場所としてすぐに思い出すことができます。
認定自走式立体駐車場は、自動車が上層階まで「自走」するための広くなだらかなスロープがあるため、車椅子やベビーカーを含めた多くの人が同時に上層階へ避難することができます。また、駐車場ならではの広くフラットなフロアは、大人数を収容するのにも適しています。現在は、非常時に備えて「防災備蓄倉庫」を常設する事例もあり、フェーズフリーな施設としての機能を高める取り組みも進んでいます。
広くなだらかなスロープ
広大でフラットなフロア
※フェーズフリー:日常時(平常時)と 非常時(災害時)のフェーズ(社会の状態)からフリーにして、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を向上させようとする、防災に関わる新しい概念。いつも使っているモノやサービスを、もしものときにも役立てることができるという考え方。(「フェーズフリー総合サイト」より:https://phasefree.net/)
これからについて
当工業会では、認定自走式立体駐車場がフェーズフリーな施設であることを広く知っていただき、地域の交通利便性向上と災害対策の両面のソリューションとして認定自走式立体駐車場の導入を検討いただくべく、全国の自治体や関係各所を訪問し、意見交換を進めています。総務省の緊急防災・減災事業債、国土交通省の都市防災総合推進事業といった避難施設建設を対象とした国の支援制度も活用できますので、詳細はお問い合わせください。
「フェーズフリー」リーフレット(一般社団法人 日本自走式駐車場工業会)